OCR のコスパ最良は、一番賢いモデルではなかった
OCR に使う複数の LLM を、モデルと思考量を変えて比べた。コストと精度のバランスが最も良かったのは、最高精度のモデルではなく、軽量な Gemini 3.5 Flash-Lite を中程度の思考量で使う設定だった。書籍1冊・特定条件での検証として、何を測り、何が分かったかを記録する。

OCR——紙や PDF を AI に読み取らせて文字にする処理——に、いまは大規模言語モデル(LLM)が使えます。では、どのモデルを、どんな設定で使うのが得なのか。複数の Gemini 系モデルを、思考量(考える量)を変えながら比べました。
結論から言うと、コストと精度のバランスが最も良かったのは、一番賢い(最高精度の)モデルではなく、軽量な Gemini 3.5 Flash-Lite を「中程度」の思考量で使う設定でした。理由を順に説明します。
検証の前提
- 対象は、ビジネス書1冊の PDF(見開きで202面)。重複しないように抜き出した60面(30面ずつ2セット)で測定しました。
- 指標は CER(文字誤り率)。表記ゆれ(全角と半角など)をそろえ、空白を除いた、文字単位の誤り率です。小さいほど良い。
- 完全な正解データは作っていません。代わりに、2つの別の AI モデルに同じ紙面の全文を書き起こさせ、その2つを別々の参照として誤り率を測りました。2つのモデルの一致度は平均でおよそ0.94〜0.95でしたが、これは参照の目安であって、OCR の正解率ではありません。人手での最終確認もしていません。
書籍1冊・特定の条件での検証です。あらゆる文書に一般化できる話ではありません。
モデル別の結果(一覧)
比較したうちの代表的な3つの設定です(書籍1冊・最初の30面)。
| モデル・設定 | 文字誤り率 CER(低い=良い) | 相対コスト |
|---|---|---|
| Gemini 3.5 Flash(低め思考) | 0.25 | ×3.8 |
| Gemini 3.5 Flash-Lite(中程度)★ | 0.20 | ×1.0 |
| Gemini 3.6 Flash(中程度) | 0.19 | ×7.2 |
★ が今回のコスパ採用です。相対コストは Flash-Lite(中程度)を1.0とした倍率。軽い Flash-Lite は、この比較で最も誤りの少なかった 3.6 Flash とほぼ同じ誤り率(0.20 対 0.19)を、およそ7分の1のコストで出せています。
1. 軽いモデルのほうが、安くて精度も良かった
直感では、重いモデルほど精度が高そうです。ところが、軽い Gemini 3.5 Flash-Lite(中程度の思考量)を、重い Gemini 3.5 Flash(低めの思考量)と比べると、次のようになりました。
- 文字誤り率は、2つのセットのどちらでも下がりました(改善はおよそ2割〜3割弱)。
- 処理コスト(AI に払う費用)は、両方のセットで、7割強(約72〜74%)下がりました。
精度が上がって、コストも下がった。「軽い=精度を犠牲にする」とは限らない、ということです。これが、Flash-Lite をコスパの軸に据えた理由です。なおコストは相対的な改善率で書いています。絶対額は割愛します。
2. 一番精度が高いモデルは、コストが約7倍かかった
では、精度を最優先にするとどうか。比較したなかで最も誤りが少なかったのは、Gemini 3.6 Flash を中程度の思考量で使った設定でした(最初の30面での比較)。ただし、この設定は、Flash-Lite の軽い設定の約7倍のコストがかかります。
最高精度が必要な場面はあります。一方で、多くの実務では「十分な精度を、低いコストで、安定して出す」ほうが得になります。だから、コスパで選ぶなら Flash-Lite、精度を最優先するなら 3.6 Flash、という使い分けになります。
3. 「思考量」は、上げれば良いわけではなかった
もう一つ分かったのは、思考量の効き方です。私たちは最初、すべてのモデルに一律で「低め」を当てていました。でも測ってみると、その一律の低めは、どのモデルでも最善ではありませんでした。たとえば Flash-Lite では、低めのときが最も誤りが多く、それより控えめにしても、逆に増やしても、改善しました。しかも、一番良い設定は、モデルによっても、誤り率の測り方によっても変わりました。
つまり「思考量は上げるほど良い」でも「低めで十分」でもなく、モデルごとに測って選ぶ必要がある、ということです。
まとめ
今回の検証ではっきりしたのは、次の3つです。
- コスパが最も良かったのは、軽量な Gemini 3.5 Flash-Lite(中程度の思考量)。重いモデルより安く、精度も良い。
- 最初の30面で最も誤りが少なかったのは Gemini 3.6 Flash(中程度)。ただしコストは約7倍で、精度を最優先する用途向け。
- 思考量は「上げるほど良い」ではなく、モデルごとに最適点が違う。
どれも、カタログの数字や評判ではなく、自分の対象データで測って初めて見えたことです。Nihonbashi AI Lab は、こうしたモデル検証と AI 活用設計を支援しています。ご相談は こちら から。
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お問い合わせ出典
- 公式公表Gemini thinkingGoogle AI for Developers・取得 2026.07.23
本記事は「報道ベース」の一次情報を入口に、業界動向と Nihonbashi AI Lab の視点を整理したものです。報道で言及された個別事例の細部は、原典をご確認ください。
