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約8分AI 全般業務設計解説

Jev とは何か 文章を作らない AI に意味の判断を任せる

選択肢・程度・yes の確率だけを返す AI を、当ラボの求人サービスの新しい検索画面に組み込んだ。公開前の検証で確認できたこと、読み違えたこと、まだ残っている課題。

Jev とは何か 文章を作らない AI に意味の判断を任せる

生成 AI に文章を書かせる使い方は、この 2 年でだいぶ広まりました。その隣に、もう 1 つの使い方があります。文章をまったく作らず、意味の判断だけを返す AI です。TypeSafe が 2026 年 9 月に公開した Jev がそれにあたります。

当ラボでは、運営する求人サービスの新しい検索画面に Jev を組み込み、本番環境に置いた公開前の画面で検証を進めています。この記事では、実装と小規模な試験で確認できたこと、読み違えたこと、まだ残っている課題を紹介します。

Jev が返すのは 3 つだけ

  • 選ぶ(Choice): 用意した選択肢から 1 つを選ぶ。選択肢ごとの確率と確信度も返す
  • 程度を評価する(Score): 順序のある評価基準に沿って、どの程度に当たるかを返す。段階の中間の値もあり得る
  • yes の確率(Noul): 渡した材料と判断基準に照らして、その問いに yes と答える確率を返す

ここは取り違えやすいところです。Noul の 0.8 は「要件を 8 割満たす」ではありません。yes だとモデルが見積もる確率です。程度を測りたいなら Score を使います。

説明文も要約も翻訳もコードも作れません。TypeSafe 直接の Early Access に加えて、Cloudflare 経由でも利用できます。当ラボの検証では後者を使いました。

念のため書いておくと、生成 AI でも、構造を決めた出力で判断させることはできます。使い分ける理由は能力の有無ではありません。費用と速さ、そして「文章を作らせない」と決めてしまうことで、受け取る側のコードが単純になることです。

速さと費用は、提供元の公表値で見る

提供元は、応答が返るまでの時間を 70 から 500 ミリ秒と公表しています。同じ資料では、既存の生成 AI を 3 秒から 329 秒とし、この種の判断では 40 倍から 200 倍速いとしています。料金は入力 100 万トークンあたり 0.042 ドル、出力は無料です。

ただし、これは提供元が並べた比較です。自社の測定については「評価はサービスの所在地である西海岸のノート PC から実行している」と注記があり、生成 AI 側の 3 秒から 329 秒は外部のベンチマークを引いています。日本から、しかも中継を挟んで呼べば同じ値にはなりません。1 桁の違いなのか 2 桁の違いなのかを見る材料として読むのが安全です。

条件は経路でも変わります。TypeSafe 直接と Cloudflare 経由では、文脈の上限・利用上限・課金の条件がそれぞれ別に決まっています。使う前に、使う経路の公式資料で確認してください。

場面で見る、3 つの分担

今の仕事と、次に探したい仕事を分ける

利用者が「今は営業だけど、次はお客さんを支える仕事がしたい。東京で探したい」と書いたとき、条件に[営業]を入れてしまうと、探している人と逆のものが並びます。

分担はこうです。発言が希望なのか質問なのか、どの仕事のまとまりを指しているのかを読むのが Jev。条件を更新し、件数を数え、並べ替えるのはコード。利用者に返す文は、あらかじめ決めた文にデータの数字を入れるだけです。ここに生成 AI は使っていません。

候補を見つける処理と、候補を評価する処理を分ける

「AI を顧客先で実装するフォワードデプロイドエンジニアの仕事」。この希望に、辞書(正規表現)だけで答えるのは無理でした。8 万件規模の求人を辞書で絞っても、残るのは「職種名に AI の字がある求人」です。目で確かめると、社名に AI が入っているだけの会社、AI 向けの半導体材料、AI 製品を売る営業が混ざっていました。これらは求人として誤っているのではなく、この希望には合わない、という意味です。

正規表現を足していけば終わりません。そこで処理を分けました。

  • 条件による照合と、本人が書いた語による候補の優先取得(コード)
  • そのページに取り出した候補を、希望と職種名の対応で評価(Jev)
  • 並べ替えと「希望に近い」の印の表示(コード)

Jev に渡すのは職種名だけです。求人本文は取り込み時に保存していないので、仕事の中身まで読んで確かめているわけではありません。そして、この再評価では取得済みの候補を削除しません。順番と印だけを変えます。

ただし、これで取りこぼしが無くなるわけではありません。言い換えだけの希望(職種名を書かずに「顧客先で実装する」とだけ書く)では、関連する求人を一次検索で十分に拾えず、Jev の評価まで届かないことがあります。候補に入らなかった求人は、並べ替えでは救えません。

聞き取りを、小さな部品に分ける(設計案)

同じ考え方は、当ラボの見積チャットにも当てられます。現在は各ターンで未確認の項目と聞き取りの完了を判断し、最後に会話全体を所定の項目へまとめています。Jev を使うなら、項目ごとの意味判断を各ターンに切り出し、「分かったこと」の表示と結び付ける構成が検討できます。たとえば「顧客管理は今回必要、受発注は後で」を、必要・後で・対象外 に分けて受け取る形です。これはまだ設計案で、実測はありません。

外し方のほうを見る

組み込みの前に、自前の試験問題を作って回しました。精度の数字は、問題の作り方と件数に強く依存するので、ここには載せません。代わりに、作ってみて効いた作法を書きます。

試験の範囲だけ先に書いておきます。2026 年 9 月 20 日、Cloudflare 経由の jev-1.13.0。並べ替えの試験は 20 種類の希望と 30 件の求人タイトルの組み合わせで、希望の単位で調整用と評価用を分けました。もう 1 つ、短い返答で画面が正しく動くかを見る試験を 30 問で回しています。どちらも、利用者による検索の評価でも、全求人の取りこぼしを測ったものでもありません。

まず、外しやすい所をわざと問題に入れました。公式が弱点として挙げている「文字どおりに読む」に当たるのが否定です。「営業だけは避けたい」と「営業だけに絞りたくない」「営業も含めて」を、同じ問題の中に並べました。

次に、しきい値を決める試験では、調整に使った問題と判定に使う問題を分けました。同じ問題で調整して同じ問題で判定すると、自分の答案を自分で採点することになります(2 つ目の試験は、同じ問題を見ながら直したので扱いが違います)。

そして、外れた答えを 1 件ずつ、原文と判断基準に戻って確認しました。すると、外れの一部は私たちが付けた正解のほうが誤っていて、ラベルを直すことになりました。AI の誤りとして数える前に、人の正解を疑う手順が要ります。

残った外れも書いておきます。確認カードが出ている状態で「お願いします」とだけ返したとき、何も起きないことがありました。画面は変わらずカードが残るので押し直せますが、利用者が同意した言葉を 1 回受け取り損ねたことに変わりはありません。短い言葉ほど、前の文脈を持ち出さないと意味が決まらないからです。

指示文の混入も試しました。取得した職種名に指示文を付け加えたテスト入力を作り、他の候補の評価へ影響するかを見る形です。今回の試験では印の有無が切り替わるところまでは起きませんでしたが、他の候補の評価値は動きました。少しずつに分けて送るのは影響範囲を狭めるための対策であって、安全性を保証するものではありません。候補を削除しなくても、順位が下がれば見つけにくくなる影響は残ります。

運用のしきい値も置いています。「避けたい職種があるか」を聞く Noul の確率が高ければ条件に入れて「元に戻す」を添え、中くらいなら条件に入れず確認カードで聞き、低ければ何もしない、という 3 段です。この値はこのサービスのこの問いに対して決めたもので、Jev 共通の推奨値ではありません。Noul の確率と、Choice や Score が返す確信度も別の指標です。どちらも、正しさや本人の承認を保証しません。

AI 側が使えないときの落とし方も決めてあります。希望の読み取りが使えないときは、コードによる簡易な読み取りへ切り替えます。候補の再評価が使えないときは、再評価前の順序で求人を返します。どちらも、障害を「該当なし」と扱わないための設計です。ただし、通常どおりの解釈ができるわけではありません。

使わない方がよい場面

公式も弱点を公開しています。計算と数え上げ、日付の前後、多段の推論、無関係な長文が混ざった材料、敵対的な文章、そして文章の生成。当ラボの線引きも同じです。

  • 計算・日付・ID の照合はコードに残す
  • 辞書や SQL で安定して解けている所は置き換えない
  • 材料がそもそも無いときに、AI で埋めない
  • 型が正しいことと、内容が正しいことと、実行してよいことは別に考える

対話や資料の取得まで Jev だけで完結するわけでもありません。会話を続けるのも、検索するのも、実行するのも、コードの仕事です。

持ち帰り

文章を書かせるだけが AI の使い方ではありません。小さな意味判断を安く受け取れるようになると、利用者が自分の言葉で操作できるサービスが作れます。

利用者が希望を言い直す回数や、検索条件を操作し直す手間を減らす。それが、この分担で目指している価値です。分類を安くする話ではなく、画面の作り方が変わる話です。

御社の業務に「利用者が言い直している場所」や「担当者が毎回読んで振り分けている場所」があれば、そこが最初の候補です。AI 活用・内製化を相談する

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